最近,学会発表や症例報告に初挑戦する後輩を指導する機会が増えてきたため,academic writingの参考書を読み漁っています。この本は先日書店に平積みされておりジャケ買いしましたが,とてもわかりやすく自分自身も勉強になったので紹介したいと思います。

パラグラフとは学術発表における「段落」のことですが,和文における段落とは意味合いが異なり,
“topic sentence→supporting sentence (→concluding sentence)の順に書く”
“One paragraph, one message”
などの原則があります。各パラグラフがそれぞれ一つの論証として完結しており,パラグラフの冒頭で示したtopic sentence(=パラグラフで主張したいメッセージ)を連ねていくことで論理展開が完成します。
英文での学術報告はparagraph writingが必須ですが,裏を返せばparagraph writingを遵守して文章作成を行えば読みやすい文章になり,topic sentenceの主張を裏付けるためにどのようなsupport sentenceが必要なのか,ということも明確になるため初学者ほどこの原則を意識しながら執筆を進める必要があります。
この本では医師が学術報告の際に習得すべき必須スキルであるparagraph writingについて,パラグラフに含めるべき内容や注意すべきポイントなどが例文を踏まえながらわかりやすく解説されています。
「学会スライドにダメ出しを食らいまくって落ち込んだ」
「病歴要約を指導医に提出したら赤文字だらけで頭を抱えた」
誰もが若手の頃に経験したことがあると思いますが,学術報告の論理構成がうまくいかない初学者の多くはパラグラフの枠組みを理解しておらず,まとまりのない文章を書いてしまっているように思います。そのため適切なparagraph writingはこの状況を脱却する第一歩になるかもしれません。
例えば学会発表であれば「1スライド1メッセージ,トピックセンテンスをスライドタイトルにする」というルールであらかじめ記載内容を決めてからスライドを作成し始めると視認性が高く,過不足のないスライドになり,病歴要約においてもparagraph writingを意識しながら記載することで,論理的な文章構成になるはずです。
個人的に印象に残ったのは,本の中に「paragraph writingはスキル」という表現が登場するのですが,以前紹介した”できる研究者の論文生産術”という書籍でも「文章の生産性は才能ではなく,身につけられるスキル」という同様の表現がありました。academic writingの原則を理解し,実践を繰り返すことで書くこと自体が上達し,生産性も向上するのだと信じてトレーニングしていこうと思いました。
とはいってもparagraph writingはあくまで「パラグラフの書き方に関するお作法」で,他にもacademic writingでは
- 適切な用語や表現を使用している
- 剽窃や孫引きなどの不正な引用を行わない
- Reporting guidelines (例:症例報告→CARE,観察研究→STROBE,RCT→CONSORTなど)を遵守している
- 各誌の投稿規定を遵守している
などポイントを挙げ始めるときりがないため,メンターの指導が重要であるのも事実です。今後もメンタリングに役立つ書籍を探し求めていこうと思います。
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