臨床倫理に関するミニレクチャーシリーズを作り始めました。
私は「終末期ディスカッション」という本を執筆した2人の指導医から臨床倫理を学びました。
前所属施設では2人が中心となって約10年の歳月をかけてEthical reasoningを病院全体の文化に昇華させたことにより,ER~一般床~ICUと院内のあらゆるセッティングで終末期ディスカッションで描かれているような議論が日常的に行われていました。
前所属施設は内部研修医のみならず全国から短期研修も幅広く受け入れている研修病院でしたが,研修後アンケートでは「臨床倫理の重要性について学べてよかった」という言葉をよく目にしました。
私自身内科後期研修,フェローシップを通じて日常臨床での実践の中でEthical reasoningについて学べたことは本当に貴重な経験でした。
今年から所属施設が変わりこれまでとは異なる環境で働く中で,学んできたことを後輩達に伝えていく重要性と,今後自身が成長し続けるためにも一度自分なりに知識を整理する必要性を実感し,ミニレクチャーというかたちでアウトプットすることにしました。
臨床倫理総論
おすすめ書籍
初回は「臨床倫理総論」と題して臨床倫理を学ぶ意義や,基本知識の紹介を行いました。
まず,おすすめ書籍として「終末期ディスカッション」「Clinical Ethics」の二冊を挙げました。
私は普段,臨床倫理のおすすめ書籍を聞かれたら必ず終末期ディスカッションを読むよう勧めています(COIはありません)。終末期のみならず,臨床倫理の概観をわかりやすく学ぶことができる極めて教育的な一冊です。
もう一冊のClinical Ethicsは臨床倫理の開祖の一人であるJonsen先生らによって執筆された,「臨床倫理のバイブル」とも言える一冊で,臨床倫理に慣れてきたら是非繰り返し目を通してほしい一冊です。
臨床倫理とは?
臨床倫理とは生命倫理(Bioethics)の一部であり,私達臨床医が医療行為を行うための行動規範のようなものです。
臨床倫理の観点から思考するプロセスのことを”Ethical reasoning”とよびます。一方で,医学的なマネージメントを決定するためのプロセスは臨床推論(Clinical reasoning)と呼ばれます。わたしたちは「医学的に妥当か」「倫理的に妥当か」2つの側面から意思決定プロセスを確認する必要があります。
解決困難な倫理的問題は「ジレンマ」と呼ばれます。私達はジレンマの前では選択肢を秤にかけ(Weighing),臨床判断を行なっています。
重要なのは選択肢の正解,不正解を決めることでははなく,意思決定プロセスの妥当性を確認し,より良い臨床判断をすることです。そのための基準としてEthical reasoningが重要です。
なぜ臨床倫理を学ぶのか?
臨床倫理を学ぶことでジレンマを解消し,より質の高い患者ケアを実現できる可能性があります。
また臨床倫理を学ぶことで,臨床業務の様々な場面に役立つと信じています。
臨床倫理の基本
倫理の原則,治療の無益性,臨床倫理の4分割表などの基本的なコンセプトについて紹介しました。
今後は各論としてレジデントのうちに修得したい実践的なスキルについてレクチャーを作成していく予定です。
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