最近ありがたいことに依頼原稿のお話をいただく機会が増えました。他業務との兼ね合いからもタイムパフォーマンスが重要なタスクであり作業時間を短縮しつつ学びある原稿を執筆する必要があるのですが,「執筆プロセス」というテクニカルな部分は唯一解がないこともあり,医学書だけでは学べないことも多いように思います。最近は医学系のみならず様々なジャンルの研究者や作家さんの書籍や記事を読んで執筆効率化に役立つ手法やツールを試しています。
今後,試行錯誤の過程も含めて紹介していきたいと思いますが,今回は依頼原稿執筆の第一歩である文献検索プロセスについてまとめたいと思います(査読付き論文執筆時の文献検索とは少し異なりますのでご容赦ください)。
依頼原稿執筆時の文献検索
執筆要綱
依頼原稿には必ず執筆要綱があり,文字数,記載してほしい内容,引用文献数,期日(+他項のタイトル,概要)などが指定されているので,まずは熟読し,原稿に記載するおおまかなトピックをリストアップしつつ,ある程度こういう文献を引用しよう,という目星をつけます。
文献検索
自分の関心領域だったり,普段から情報をアップデートしている領域の原稿であればいきなり構成を決め,そのまま引用文献をピックアップしてしまうこともあるのですが,文献検索は自分の臨床マネージメントを客観的に振り返る良い機会になるので基本的には以下の手順で行っていきます。
国内書籍,雑誌(+ブログ記事)
総説,UpToDate,国内外ガイドライン
注意点として,英語論文を読み込みすぎると「この検査や薬は日本では使えない」「この薬の用量は本邦の添付文書を超えている」など日本の臨床に即していない原稿になってしまう可能性があるので,国内外の文献にバランスよく目を通すのが重要と考えています。また,国内外ガイドラインではしばしば推奨が異なることがあり,うまく考察ができれば原稿で扱うこともあります。
研究論文
①②を踏まえて大まかな構成を決定したら,それらで引用されているものや追加で情報検索した研究論文を読み込みます。このプロセスが新しい文献との出会いがあり一番楽しいのですが,こだわり始めると無限に時間を食ってしまうので網羅的検索は行わず,文脈に即した文献を短時間で探すことを心がけています。まずはabstractを確認し,引用文献になる可能性がある,もしくは今後のマネージメントに役立つ可能性がある論文のみを読み込むようにしています。
引用文献を決める
引用文献数上限が決まっている場合は①~③の中から,原稿の文脈に即した必読文献と思われるものを優先的に選びます。
AIツールを活用する
文献検索時にConsensusで種論文探し→Connected papersで関連文献把握というコンボをよく使うのですが,AIツールを活用することで効率よく文献にたどり着けるようになったと思います。
英語論文はChromeで本文を読みつつ,拡張機能で適宜DeepL翻訳のpopupを表示していますが,疲れると英文が読めなくなってくるので,最近はNotebookLMに文献翻訳,要約を任せる機会が増えました。これまたリソースを指定するタイプのAIツールのためhallucinationが少なく,非常に使い勝手が良いです。
(NotebookLMはどの部分を翻訳したかも示してくれるので,引用の際は必ず原文にも目を通すようにしています)
資料管理
最近は
①Notionで文献情報管理+クラウドにpdf保管
②PapersでWordアドイン
という方法に落ち着きました。
もともと一度読んだ文献pdfを保管し,必要に応じてEvernoteにまとめる習慣はあったのですが,執筆をするようになりプロジェクト毎に文献情報を管理する必要が出てきてから試行錯誤していました。
PapersはUIがきれいで,ブラウザ上での文献情報の自動収集からWordでのreference listの作成まで大変スムーズで文献管理ソフトとしての機能には大変満足しています。一方でかつてPapers上で執筆に関わる文献情報の一括管理を試みたのですがいまいちしっくり来ませんでした。
普段からタスク管理はすべてNotion上で行っており使い慣れていること,テーブル作成の自由度が高くソートがしやすいことや各項目からページを展開できるのでそのままメモや下書き,画像のスクショを保管できるなど,執筆プロセスにピッタリハマったため最終的に現在の形に落ち着きました。
自分がNotion上で管理している情報は以下のとおりです。
- 年度+タイトル
- 内容メモ
- Citation
- タグ
- 論文URL
- (テーブル内にpdfを埋め込むことも可能です)
自分は文献収集が趣味なので,プロジェクト終了後,文献pdfはicloud上のフォルダに移動して保管しています。(文献pdf管理は以前福岡県I塚病院総合診療科での短期研修中にK先生という論文ソムリエの文献フォルダを見せていただいた際に感銘を受けて始めました)
まだまだ駆け出し執筆者のため,引き続き試行錯誤を繰り返していこうと思います。おすすめ執筆法やお役立ちツールなどの情報提供があれば随時お待ちしております!
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