【執筆】成人発症スティル病 (AOSD)の鞭打ち様紅斑に関する論文がCureusに掲載されました

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Persistent Pruritic Linear Streaks of Adult-Onset Still’s Disease: Reconsidering the Yamaguchi Criteria”というタイトルのケースシリーズがPublishされました。紆余曲折ありましたが1年間の長旅を経てacceptされ,執筆陣一同安堵しています。

今回は領域トップジャーナルへの挑戦などもあり,多くの学びと反省がありました。今後に活かすべく経過をまとめたいと思います。

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Persistent Pruritic Linear Streaks of Adult-Onset Still’s Disease: Reconsidering the Yamaguchi Criteria

概要

主たるメッセージは「鞭打ち様紅斑を認識することはAOSDの早期診断に有用な可能性がある」です。

AOSDは発症早期には発熱,咽頭症状,肝酵素,炎症反応上昇などの非特異的症状しか認めないことがあり,ウイルス感染と誤診されたり,診断がつかず不明熱としてマネージメントされることがあります。皮疹も正しく認識されないと非特異的な中毒疹などと間違われることがあり,発症から診断までに時間を要する事が少なくない疾患です。

鞭打ち様紅斑はAOSD以外にも皮膚筋炎,しいたけ皮膚炎,ブレオマイシンなどでも生じるとされており,現行のAOSD分類基準である山口分類には含まれない非定型皮疹という立ち位置です。一方で実臨床ではしばしばAOSDの発症早期から認めることがあります。今回の論文では,鞭打ち様紅斑を中心にAOSD発症初期のillness scriptを描写することを目指しました。

Persistent pruritic linear streaks

既報では論文ごとに表現や定義にばらつきがあったため,今回の論文では以下を”Persistent pruritic linear streaks ”と定義しました(以下,PPLsとします)。

PPLs
①AOSDの症状が改善するまで持続する
②そう痒感を伴う
③掻爬により生じる線状に集簇した
④既報でdermatomyositis-like, erythematous and maculopapular, flagellate-like, hyperpigmented, lichenoid, persistent pruritic papules and plaques, and urticarial eruptionsなど様々な表現で認識されている皮疹

 

AOSDと診断した自験例について症例ごとのPPLsの有無,出現時期などの特徴について調べました。結果は症例の95%でPPLsが出現しており,出現時期もサーモンピンク疹より早い傾向がありました。また,過半数の症例はAOSDの症状出現からが診断までに1ヶ月以上を要し(中には1年以上という症例も),3つ以上の診療機関を受診しており,仮に症状が揃っていても,AOSDを鑑別に挙げるのは容易ではないことがわかりました。

Limitationとしては電子カルテ記録から後方視的に収集した情報であり,情報が不完全な可能性があること,2施設限定のnが少ないパイロット研究であることなどが挙げられますが,我々ジェネラリストはPPLsを含むAOSD発症早期の臨床像を知ることで,早期の膠原病内科への紹介,AOSDの早期診断に役立つと言うメッセージを伝えられる結果だったと思います。

着想

自分が病棟チームリーダーとして指導していた際に,レジデントが担当した実際の症例を基に着想を得ました。

当初,診断エラーを軸に学会発表→ケースレポート作成の流れを想定して準備を進めていたのですが,膠原病内科指導医と相談しているうちに,関連施設も含めある程度AOSDの症例が集積していたことから直接ケースシリーズ化することにしました。

ちょうど自身の臨床業務や研究,転職などが重なり多忙を極めていた時期だったため,2nd authorとしての役割を果たすことは困難と考え,3rd authorとして執筆作業全体の後方支援に回ることにしました。具体的には執筆初挑戦の1st authorのメンタリングをしながら文献検索,原稿の校正,推敲作業(一部執筆)や,投稿誌の選定などをお手伝いしました。

JAMA Dermatology

Day 1   Submit
Day 30 Revision
Day 49 Resubmit
Day 57 Revision②
Day 62 Resubmit②
Day 66 Revision③→Resubmit③
Day 78 Revision④
Day 83 Resubmit④
Day 91 Transfer

皮膚所見にフォーカスした論文だったことから,まず皮膚科のトップジャーナルであるJAMA DermatologyにBrief reportとして投稿したところ,幸運にもRevisionにかかりました。Reviewerからのコメントは「重要な指摘である」「良くまとまった論文」「興味深いディスカッション」などいずれも好意的かつ建設的なコメントが並んでいたように感じました。以降のRevisionにはReviewer commentは記載されておらず,ある程度要求をクリアできていたのではないかと思います。

一方でEditorからは「Figureのピントが合っておらず,皮疹の全体像を捉えられず掲載できるクオリティではない」との指摘を受け,画像の修正もしくは差し替えを要求されました。

Figure用の画像はいずれも論文投稿を意図したものではなく,過去の症例で電子カルテ記録用にデジタルカメラで撮像されたものでした(論文のきっかけとなった直近の症例もPPLsを適切に捉えた写真を残せていませんでした)。
どの画像も一見皮疹にピントは合っているように見えるものの,強拡大するとわずかにピンボケしており,皮疹の性状を詳細に描写するのが困難と判断されてもおかしくない画質でした。結局代替画像を用意することはできませんでした。

一般的にClinical pictureに必要な解像度は300dpiと言われますが,JAMAグループは350dpiを要求しています。実際JAMA Dermatologyに実際に掲載されている論文にはたいへんクオリティの高いFigureが並んでいます。

上記の画像の件を含むいくつかの修正点についてEditorとのやり取りが続いた後,最終判断はReject,その後JAMA Network OpenへTransferとなりましたが同様にRejectの判断となりました。

論考を支持する高画質なClinical pictureを用意できなかったのは非常に残念でした。トップジャーナル掲載に値する論文には本文のみならず,Figure,Table,論文に含まれる全てのコンテンツで高いクオリティを求められることを実感しました。今後日常臨床での写真撮影は常にclinical pictureになり得る,という心意気でクオリティの高い写真を効率よく撮影できるよう心がけよう,と決意しました。

その後は皮膚科,膠原病,内科系のジャーナルへ計4誌ほどSubmitし,revisionにかかることはあったものの残念ながらいずれもrejectの判断でした。

Cureus

Day 1 Submit
Day 3 Preferred Editing→In Review
Day 8 Revision
Day 9 Resubmit
Day 15 Accept→Publish

個人的には前回の壊血病のケースレポートに引き続き今年2回目のCureusです。

【執筆】壊血病のケースレポートがCureusに掲載されました
"A Case of Scurvy Associated With Intracerebral Hemorrhage in a Patient With Alcohol Use Disorder”というタイトルのCase reportがCu...

Reviewerからも建設的なフィードバックを頂き,いくつか本文,Tableの修正を加え再投稿し,投稿開始から約2週間でacceptとなりました。極めて迅速な投稿プロセスに改めて感心しました。


個人的感想としてレジデントの頃から膠原病診療を含め多くを教わった岩波先生との共著論文が無事形になり感慨深かったです。

執筆プロセス全体を振り返っても大変学び多きプロジェクトとなりました。

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