【書籍紹介】膠原病コンサルの手引き その相談の根拠・原因,説明できますか?

Book review

東京ベイ・浦安市川医療センターの岩波慶一先生より「膠原病コンサルの手引き」をご恵贈いただきました。

膠原病コンサルの手引き
膠原病は全身性の自己免疫疾患であり,関節症状,皮膚症状,頭頸部の症状,臓器病変,薬剤副作用,そのほかさまざまな臓器に炎症を引き起こします.しかし,これらの症状は膠原病以外の疾患でも見られることがあり,鑑別診断に苦慮することも少なくありません...

早速通読しましたが,単なる入門書にとどまらず,膠原病を学びたい全ての方におすすめの一冊だと感じました

リウマチ膠原病疾患の診断プロセスが疾患クラスター,症状,検査データなど複数の切り口から図表や臨床画像を交えて解説されており,重層的に理解できる構成となっています。
しばしば膠原病ミミックとして鑑別に挙がる筋骨格系疾患,皮膚疾患や血液疾患についての記載も充実しており,膠原病診療の奥深さを学べる一冊です。

ホスピタリスト方式の入院診療システムを採用している東京ベイでは膠原病入院症例は岩波先生がコンサルタントを行い,総合内科チームが病棟主治医として対応します(少し古いですが,東京ベイ総合内科レジデントの働き方についての記事)。腎臓内科,集中治療科などのバックアップにより,薬物治療のみならず緊急透析や血漿交換,人工呼吸器管理などの治療も行える診療体制であることから,周辺医療機関からの重症例,複雑症例も積極的に受け入れており,内科専攻医期間中にこの書籍で扱われる疾患の多くを主治医として経験することができます。

総合内科チームには膠原病診療を行う上で十分な理解度が求められることから,隔週で岩波先生による膠原病カンファレンスが行われています。
内容は診断プロセスから治療に至るまでのclinical reasoningを深堀りするケースカンファレンスや,検査の測定原理の解説,疾患の総論レクチャーなどバリエーション豊かです。

一般的に研修医や内科専攻医にとって膠原病は遭遇頻度が低く,疾患概念の理解も難しいことから敷居が高い印象があるかもしれません。
例えば本書でも言及されている

「抗核抗体と抗SS-A抗体を一緒に提出する理由は?」
「なぜ本邦ではMMP-3が頻回に測定されるのか?」
「ANCA陽性≠ANCA関連血管炎な理由は?」

など,膠原病に明るい先生方の間では常識的な知識も,初学者が実臨床の中で気づきを得るのは容易ではありません。そんな膠原病に関する疑問をわかりやすく,論理的に紐解いていく膠原病カンファレンスは専攻医の間でも大好評でした。

この本はそんな岩波先生の東京ベイでのティーチングを体験できる一冊となっています。

私は専攻医時代,岩波先生が編集執筆したステロイド治療戦略という書籍で膠原病治療について勉強しました。「膠原病コンサルの手引き」は「ステロイド治療戦略」と併せて必携の一冊となりそうです。

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