2024年度集中治療科専門医試験 振り返り

Critical care

去る2024年10月26日に行われた集中治療科専門医筆記試験を受験しました。試験を終えた率直な感想は

試験対策で試行錯誤

でした。

サブスペ専門医試験全般に言えることかもしれませんが,学会から発行されている過去問集(解答あり,解説なし)以外にインターネット上に試験対策に関する情報はほとんど存在せず,職場異動なども重なり身近に受験仲間がいなかったため不安を抱えながら試験当日を迎えました。

試験後の約2ヶ月は悶々とした気持ちで過ごしていましたが,12月27日(金)に年内ギリギリで結果発表があり結果は無事合格,晴れて次年度から集中治療専門医を名乗れるようになりました。

n=1の体験談ではありますが,試験対策についてまとめようと思いますので今後受験を検討している方々の参考になれば幸いです。

注) 少し前に過去問の解説集を作成,インターネット上で販売するという事例が発生し,学会から注意喚起が出ていました。著作権侵害はダメ絶対です!

2024年度 集中治療科専門医筆記試験

合格率

古いデータでは同確率は80~90%程度という記載を見受けますが,令和4年度版 日本専門医制度概報によると令和以降の合格率は約70%と,最近はサブスペ専門医試験の中でも合格率が低いようです。

出題形式

100問/150分一本勝負で,国試で言うところの一般問題,臨床問題がランダムに出題されます。

傾向としては過去問に登場する知識,スコアリングや計算式の丸暗記だけで対応できるプール問題は少なく,病態生理などの背景知識の理解を問う問題が多いように感じました。とはいえ選択肢レベルでは過去問+周辺知識で対応できることが多く,「正しいものをすべて選べ」という問題はないため選択肢を絞り込んでいければ正解はわからずとも解答できる問題も多かった印象です。

過去問だけでは対応できない新問が20問以上あった気がしますが,日常臨床の知識で対応できる問題と皆目見当のつかない問題が混在していました。新問の出題範囲を予想することは困難なため過去問ベースで勉強するのが正攻法だと思います。

試験対策

自分が持っていた事前情報は,前年度に専門医を取得した前職同期からの「過去問5年分+専門医テキストをやれば合格できる」というアドバイスのみでした。

使用した教材
①日本集中治療医学会専門医テキスト 第3版
②重症患者管理マニュアル
③人工呼吸管理レジデントマニュアル
(Intensivist, 論文も少々)

①日本集中治療医学会専門医テキスト 第3版

昨年,前述の同期が医局デスクで専門医テキストとにらめっこしているシーンを何度も見かけたので,彼の言葉を信じて突き進みました。
このA4約1000ページに及ぶ大型テキスト,賛否両論あるらしいのですが,自分はこのテキストを読み込んだおかげでスムーズに解答できたように感じました。学会公式テキストなので当然かも知れませんが,出題範囲の知識が過不足なくまとまっており図表も見やすく,テキスト内の記載がそのまま新問の選択肢になったりするので,過去問に対応するテキストの内容をまとめつつ読み進めました。
自分は診療経験に乏しい小児,熱傷,移植などの分野が明確に苦手分野だったのですが,試験対策と割り切って他の参考書は使用せず専門医テキストを読み込みました。
注意点としては発売が2019年と少し古いので,掲載されているガイドラインなどについては適宜最新情報を確認する必要がありました(ともすれば専門医テキスト自体が近々改訂されるのかもしれません)。
書籍を購入すると電子版をダウンロードできるのですが,専用のビューワーが必要で当初操作に難渋しましたが慣れると分厚い書籍を持ち歩く必要がなくなるので重宝しました。

②重症患者管理マニュアル

①だけでは対応できない問題や,平時のマネージメントを振り返りたいときに目を通せるマニュアル本が一冊あると良いと思いました。自分は専攻医時代から重症患者管理マニュアルを愛用していたためそのまま試験勉強にも流用しましたが,これは普段使用している書籍で良いと思います。

③人工呼吸管理レジデントマニュアル

人工呼吸器非同調に関する問題は毎年数問出題される貴重な得点源ですが,①ではカバーしきれないため,これについてもグラフィックが充実した参考書が一冊手元にあると良いかもしれません。人工呼吸管理レジデントマニュアルの「患者-人工呼吸器間の非同調」という章があるのですが,グラフィックの解説が秀逸で直近数年分の人工呼吸器に関するほとんどの問題はこの章を通読することで得点可能でした。

①~③を読んでもわからない問題のみIntensivistや論文で情報検索を行い,それでもわからなければ前職の同期受験メンバーのグループチャットで質問,という感じでとにかく情報検索に時間をかけ過ぎないことを意識しました。勿論,試験勉強を通じてこれまでの診療で得た知識を整理するのは重要なのですが,知らないことが出てくるたびにJust in case learning(今後使うかもしれない知識として勉強)をし始めると,情報量が膨大になりすぎて得点に結び付きづらくなるので,試験対策という観点ではタイムパフォーマンスの塩梅が難しいところです。
ICU機能評価や医療制度などに関する問題も数年出題されますが,これは正直専門医テキストと過去問の知識以上を深堀り,暗記するのはコスパが悪いように思いました。強いて言うなら2年に1回の診療報酬改定ごとに厚労省資料が発表されるので,ICUに関わる項目の変更点だけ確認しても良いかもしれません。

対策期間

臨床業務と家事の合間を縫って1日に確保できる勉強時間は0.5-2時間程度とまちまちになることが予想されたので,直前でバタつかないよう2.5ヶ月程度準備期間を設けました。過去問5年分×3周には十分な期間だったと思います。

まず4年分の過去問を繰り返し演習し,試験1週間前に力試しに1年分を追加で解きました。

初年度の過去問は問題を解くのに4日,調べ物に10日で計2週間ほどかかりました。 正答率も50%未満でかなり焦りました。1周目は数年分解いてもあまり得点が上がらなかったものの,気を取り直して2周目は引き続き全問解答,3周目は間違えた問題のみという感じで解き直しました。

1周目は3年分くらい解き終わった時点で全然得点が伸びず。。。結局正答率100%は達成できず本番突入でした。

内科専門医試験のときはEvenoteにまとめを作っていたのですが,今回はNotionを使いました。直前はトグルとテーブル機能を利用して暗記リストを作りましたが,とても使い勝手が良かったです。

(後輩がUSMLEの勉強でAnkiを使用しているのを見かけて使ってみようか一瞬悩みましたが,「これ,短期決戦で使っても意味ないな」と思いとどまりました)

おまけ:出願

現在集中治療専門医制度は転換期で,従来の学会認定専門医試験は2027年度までで終了し,機構認定専門医試験に移行していきます。

特に学会認定専門医の場合
・学術集会参加(総会2回,支部会1回以上)
・学会発表
・集中治療に関する論文1篇

等は直前での対応が難しく時間を要するため計画的に進めていく必要があります。専門医取得を検討している方には早めに学会HPで出願要綱確認しておくことを強くおすすめします。

また,診療実績に使用する症例候補を出願直前にリストアップするのはとても手間がかかるので,日々の臨床業務と並行してあらかじめ収集しておくことをおすすめします(出願様式は学会HPからExcelファイルをダウンロードできます)。

学会認定 集中治療科専門医制度施行細則
機構認定 集中治療科専攻医研修マニュアル

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