【書籍紹介】パッカーのケースレポート執筆完全ガイド

Book review

最近は症例報告を執筆指導する側に回ることが増えてきましたが、未だに症例報告に関する書籍が発売されるとチェックしてしまいます。

今回は、Writing Case Reports: A Practical Guide from Conception through Publicationの翻訳書を紹介したいと思います。

(MEDSi)株式会社 メディカル・サイエンス・インターナショナル / パッカーのケースレポート執筆完全ガイド
症例報告には 明日の臨床、教育、研究を変える力がある 本書を読んで、あなたの症例の価値を 最大化し、論文化しよう 単なるケースレポート(症例報告)論文の書き方指南書にとどまらない、症例選びから掲載・出版後までを視野に入れたガイドブック。症例...

パッカーのケースレポート執筆完全ガイド

原著未読だったため、この本を通じて初めて内容に触れましたが「なぜ、症例報告を書くのか」という根源的な内的モチベーションを刺激する一冊だと思いました。症例報告の質を上げるために各執筆プロセスで行うべきことについて詳細に記されており、仕事から帰宅後の二晩で読み切ってしまいました。

きめ細やかな訳注

特に序盤は症例報告の歴史を振り返ってその価値を深堀りする構成になっているため、Pubmed登場前はもちろん古代から近代の報告についての記載が多いです。本文を一読しただけでは理解することが難しい部分もあるのですが、訳者の鹿野先生による訳注が大変充実していました。

どこか、愛読書である平静の心(オスラー先生が100年以上前に残した講演集で聖書や古典文学からの引用が多く、訳注を読まなければ原文の意図を理解するのは困難)を彷彿とさせる心配りで、文章への理解が深まった気がします。

Clinical Problem Solving

この本では症例報告の形式ごとに執筆のコツが記されていますが、CPSの書き方について1章が費やされています。

以前、症例報告を執筆し始めた頃に無策でNEJM CPSに挑戦し悪戦苦闘したことを記事に残しました。

特に、この本でも紹介されている”discussant response”のパートの取り扱いについてとても困ったのを鮮明に覚えていますが、CPSの執筆プロセスについて詳細に記された成書を初めて読み大変勉強になりました。

改めて、いつかCPS形式の症例報告を執筆してみたいと決意を新たにするとともに、今後CPSの執筆への挑戦を検討している方はぜひこの本に目を通すことをおすすめしたいと思いました。

症例報告は時間をかけて引用される

この本では症例報告は大規模臨床研究と比べて、引用されるまでに時間がかかることを指摘し、その理由を考察しています。

少し前にXで同様の議論をしたところだったので、なるほど~と思いながら読み進めました。

一方で症例報告を軽視することに対する辛辣なジョークが紹介されていたのも印象的でした。


全体を通じて、「症例報告への理解を深めたい、質を高めたい」と考えている先生方におすすめしたい内容だと感じました。

 

 

ちなみに、症例報告初挑戦という方にはこちらの一冊もおすすめです。

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